歴史上初の海洋文明を生み出し栄えたエーゲ文明でも「印」が用いられています。紀元前3000年頃の初期のものはピラミッド形や円錐形でした。印材には今日と同じように象牙が用いられ、凍石も使われました。中期(紀元前2700年〜紀元前1600年)には三稜形や四稜形のものが登場してきます。紀元前1600年以降の後期を迎えると、彫刻の技術もさらに高まり、水晶を印材に用いるようになります。描かれた内容は、初期・中期は象形文字が主流でしたが、やがて動物、魚、舞踊、神々など絵画的で複雑精緻な絵柄が現れてきます。表現もきわめて自由奔放で、芸術的な視点から見れば、古代メソポタミアやシュメール人たちが創り出した印に優るとも劣らない高水準に達していました。紀元前の時代から印章は神聖なものであると同時に、際立つ芸術品と見なされていたことを、これらの印によって推測することができます。

図版出典 / 東西印章史 新関欣哉著


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